この度は第37回日本脳腫瘍学会学術集会の会長を仰せつかり、2019年12月1日~3日にあえの風ホテルにて開催する運びとなりました。杏林大学医学部脳神経外科学教室と致しましても大変に光栄に存じます。
本会は、日本脳神経外科学会における脳腫瘍関連の学会・研究会の中で、もっとも長い伝統と歴史をもつ学会です。米国カリフォルニア州アシロマで行われてきた、悪性脳腫瘍の基礎研究と臨床を徹底的に討論する、所謂アシロマカンファレンスを基にして、日本では1980年に前身である第1回「日光脳腫瘍カンファレンス」が開催されました。以降1992年からは「日本脳腫瘍カンファレンス」として、そして2002年からは「日本脳腫瘍学会学術集会」と名称も進化し、本年は新年号・令和の下での初回開催となりました。本会では参加者一同が一つのホテルに泊まり込み、日々多忙な日常臨床業務から離れて、会期中朝から晩まで心おきなく脳腫瘍について語り合う(明かす)特殊なスタイルを、設立当初より一貫して続けて参りました。もちろん今回もそのために事務局一同開催準備を進めております。
近年のヒトゲノム解析をはじめとした医学系研究の急速かつ高度な技術革新に伴い、がんの病態解明ならびにその知見に基づいた新規治療法の開発はめざましい成果をもたらしており、難治性がんの少なくとも一部には有効な治療薬の導入による飛躍的な予後の改善がみられております。一方、膠芽腫を中心に悪性脳腫瘍の領域ではその歩みは依然大きく立ち後れているのが現状です。成人から小児、そして急増している高齢者と幅広く罹患する悪性脳腫瘍に対して、本年より本邦でも保険承認となった「がんゲノム医療」をはじめ、次なる一歩はどこにあるか、国際的な視点も交え議論が出来ればと考えております。今回、欧米より脳腫瘍の基礎・臨床におけるご高名な6名の先生方をご招待致しました。成人神経膠腫の分子生物学(米国Ludwig Institute for Cancer ResearchのWebster K. Cavenee先生)、小児悪性脳腫瘍分子遺伝子学(ドイツDKFZのDavid TW Jones先生)、成人神経膠腫(ドイツ・ハイデルベルク大学のWolfgang Wick先生)、髄膜腫、転移性脳腫瘍(ウィーン大学のMatthias Preusser先生)、悪性リンパ腫の治療開発(米国ニューヨーク・Memorial Sloan-Kettering Cancder CenterのChristian Grommes先生)、TTFおよび患者ケア(米国UC IrvineのDaniela A. Bota先生)などについて最先端の情報を提供して頂きます。
昨年の植木会長が導入され、好評を博しました海外演者と若手研究者との交流の場「Meet-the-Expert」セッションを、本年も引き続き行う予定と致しております。さらにいくつかの新たな試みを検討いたしました。本邦でも脳腫瘍の研究・診療領域へより多くの女性研究者やコメディカルの参画を目指し、「WiN(Women in Neuro-Oncology)の集い」を、米国で先駆者であられる招待者を囲んで行う予定としております。また、応募演題の中から上記海外からの招待演者を中心に査読をして頂き、優れたご発表に対してTop scoring abstractを選出することも計画しております。今後の本会を担っていく若手の先生方に大きなモチベーションとなれば幸いです。さらに、本学会の研究活動を国内のみに留めるのではなく、広く国際的にも認知してもらうことを目的に、今回、World Federation of Neuro-Oncology Societies(WFNOS)に関連して発刊されました国際科学誌:”Neuro-Oncology Advances”に、希望者の抄録を掲載することを検討中です。
悪性脳腫瘍の患者さんは予後も悪く、中枢神経障害による多彩な症状があり、適切な支持療法ならびにケアを含めた支援体制の構築は腫瘍の治療と並ぶ重要な課題です。本学術集会では、悪性脳腫瘍の研究と治療に携わる脳神経外科医、小児科医、放射線科医、病理学医、基礎研究者、腫瘍内科医に加え、看護師、リハビリテーション科のスタッフやソーシャルワーカーなど、多業種にわたるメンバーが一同に会します。基本に立ち返り、多角的に今後のNeuro-Oncologyのあり方を探ることを念頭に、「Multidisciplinary Neuro-Oncology」というサブタイトルをつけさせて頂きました。伝統である夜のポスター&ワインセッションも、全館貸し切りでございますので、能登の美酒とともに大いに盛り上がって頂き、異なる領域の皆様が親睦を深められ、意義のある会となることを期待しております。
多くの皆様からの演題の応募と、ご参加をお待ち申し上げます。
よろしくお願い申し上げます。